1. はじめに
これから複数記事にわたって、聴音RPG【失われた音問村】(以下、聴音RPG)[1]の攻略方法について説明していきます。攻略ルートそのものについては筆者の解説によるスピードラン動画[2]をご覧いただくこととして、これらの記事では聴音RPGの攻略に必要な音感の習得方法と各モンスター(聴音RPGの世界観に従い、以下「音霊」と呼称します)との戦い方を記載します。
1.1. 聴音RPG攻略に必要なもの
大雑把に言って、聴音RPGの攻略には次の二つが必要になります。もちろん聴音RPG自体がこれらを身に付けるためのゲームですので、プレイ前に用意しておく必要はありません。
・ごく基本的な楽典の知識
・絶対音感または相対音感
1.1.1. 楽典
楽典とは、楽譜の読み書きに必要な約束事です[3]。音楽ジャンルによってところどころ用語が異なる部分はあるものの、いわゆる音楽理論に進む前の共通言語にもなりますので、学んでおくと何かと便利です。筆者がTwitchでの作曲配信中に何か独り言を言っているかと思いますが、その言葉の意味が分かるという効能もあります。聴音RPGでは選択肢に音程(短二度、増四度など)や和音の種類(長三和音、導七和音)が出てきますので、楽典の知識が無ければ聞こえてきた音どころか選択肢すら分からないという状況に陥ります。洗足オンラインスクールには楽典の解説もあります[4]し、この攻略記事は楽典の知識を前提としていますので、用語が分からなくなったときには該当ページを参照することをお勧めします。
1.1.2. 絶対音感と相対音感
絶対音感は、ある一つの音の高さを、他の基準となる音なしに特定する能力です[5]。筆者が所持しているのはこちらで、3歳でピアノを習い始めた時から、毎週のレッスンの終わりに音感のトレーニングをさせられたのを覚えています。一方で、ある基準となる音があったとき、別の音との関係を音楽的な文脈から把握し、それによってその音の高さを捉える能力が相対音感です[5]。音楽とは1音のみより成るものではなく、それゆえに相対音感を所持していれば実際上問題ないものと思います。
聴音RPGは絶対音感、相対音感いずれを用いても攻略できるように設計されていますので、この記事はそれぞれの場合を想定して攻略法を記載します。なお、絶対音感は幼少期の限られた期間にしか習得できないというのが通説です[6]。相対音感については聴音RPGや他の洗足オンラインスクールのコンテンツを通じて身に付けられるという想定ですが、私自身の経験に乏しいので保証はできないというのが正直なところです。また、書店を回って聴音に関する書籍を探しましたが、ほとんどが幼少期の絶対音感の形成に関するものか、音楽大学入試向けの高度なものであり、大人の初心者向けの資料は見つけられませんでした。
1.2. 聴音RPGの位置づけ
音楽大学入試の聴音では、一つ又は同時に演奏される複数の旋律や一連の和声の流れを聞き取ります[7][8]。聴音RPGはこれらの入試課題から単一の要素を抜き出したものであり、それゆえに入試聴音とは別種の難しさがあります。聴音RPGでは音霊が音を出してから数秒間の解答時間がありますが、旋律聴音や和声聴音では聴取すべき音が音楽の時間軸に沿って流れていきます。一方で、その音楽的文脈の存在のため、音楽大学入試の聴音の場合はある程度次の音が予測できてしまうことがあります。
もちろん聴音RPGで培った音感が音楽大学入試や実際の音楽で行う聴音の補助となるのは確かなのですが、聴音RPG攻略のために音楽大学入試用の書籍を読むというのも本末転倒の感が否めません。各論では、洗足オンラインスクールのコンテンツを利用しつつ、聴音RPG攻略に直接役立つ情報を記載していきます。
1.3. 音を聴くことと音楽を聴くこと
そもそも聴音RPGのスピードランに固執すること自体が本末転倒ですので、聴音RPG攻略の各論に進む前に自戒の念を込めて記しておきます。音声1はとある作品の和音を一つだけ切り出してシンプルにしたものです。聴音RPGをクリアされた方なら属七和音を想起するでしょうし、絶対音感のある方なら譜例1のような和音を思い浮かべたでしょう。