2021年2月23日火曜日

第13回 RTA BootCamp『聴音RPG【失われた音問村】』台本(抜粋)

 
 
本記事をご覧いただきありがとうございます。本日、第13回 RTA BootCamp[1]に参加し、聴音RPG【失われた音問村】[2]のスピードランをさせていただきましたので、その台本のうち前説と後説を公開いたします。私のような作曲をメインとしている配信者がスピードランイベントに参加することは珍しいかと思いますので、そこに至る経緯と、作曲練習におけるスピードランについて説明させていただきました。何かのご参考になりましたら幸いです。
 
 
 

1. 前説

 
それでは、音問村学会より発表を始めさせていただきます。本ゲームについて余りにも喋りたいこと・喋らなければならないことが多く、RTA中の説明だけでは足りませんので、前説5分、RTA 1時間、後説5分というスケジュールで行きたいと思います。
 
 

ゲームの説明

 
聴音RPG【失われた音問村】は2010年に洗足学園音楽大学のオンラインコンテンツ、洗足オンラインスクールが開発したブラウザゲームです。音感の向上を目的としたゲームでして、見た目は昔ながらのRPGですが、戦闘が非常に特徴的です。敵の出した音の高さや音程、和音の種類、楽器名等を判別し、正解したらダメージを与えることができ、間違えればダメージを受けます。ストーリーについては、オープニングで字幕が流れますのでこれから朗読していきます。スクロールがやたら早いので早口で喋ります(あらすじを流す)。

All CDsというカテゴリですが、こちらはゲームの進行に必要なアイテムであるCD全てを集めるカテゴリです。詳細は追ってプレイ中に説明しますが、現在これらのCDの取得を1枚でもスキップする方法は見つかっていないため、実質Any%となっています。現在speedrun.comに存在するカテゴリはAll CDsのみ、走者は私のみです。いずれ走者が増えてくればゲームを壊してくれる人も出てくるのかな、という期待を込めてこちらのカテゴリ名にいたしました。
 
 

自己紹介

 
自己紹介も前説で済ませておきます。私はもともと作曲を行っている配信者で、去年までは他の方のRTA配信を拝見するだけでした。実はそれまでも作曲配信でタイムアタックらしきことはやっていて、洗足オンラインスクールには作曲の自動採点システムがあり、例えばその自動採点システムで7分以内に満点をとろう、というようなことをやっていました。

転機になったのは昨年末のRTA in Japanで、KORG Gadget for Nintendo Switchを用いて15分で作曲するというカウントダウン式RTA[3]を目にし、「私もRTAやってたんだ……!」というRTA走者としての自覚が急速に芽生えてしまいました。そこで、普段お世話になっている洗足オンラインスクールを世に広め、そのコンテンツで一緒に遊んでくださる方を増やすために本格的にRTA活動を始めました。それまでやっていた作曲自動採点システムのルールを明確化して走ることも考えましたが、色々と難しい部分がありましたので、耳のトレーニングを兼ねてこの聴音RPGを走ることといたしました。その後speedrun.comのページ作成と、Twitchでのゲームカテゴリ作成を行って今に至ります。

それでは長々と喋らせていただきましたが、聴音RPGを走らせていただきます。なお、本発表に際して洗足学園音楽大学様との利益相反関係はございませんが、公式Twitterに捕捉されてビビっております。
 



 

(スピードラン:聴音RPG【失われた音問村】)


以上、聴音RPGでした。ゲームとしても非常にしっかりしているため、是非遊んでいただければと思います。ここから後説に移らせていただきます。
 
 
 

2. 後説

 

洗足オンラインスクールのコンテンツ紹介

 
洗足オンラインスクールについてですが、聴音RPG以外にも様々なコンテンツが用意されています。例えばRPG要素なしに純粋にモンスターたちと戦いたい場合には、ワオーン・デスマッチ
[4]やネイローンの逆襲[5]といったゲームが用意されています。また、そもそも「増四度」だとか「長七和音」だとかの音楽用語の意味が分からない場合は、楽典解説をご覧いただければ楽譜の読み方から学ぶことができます[6]。自動採点による試験を受けることもできますので是非ご活用ください。
 
また、私がRTAを行っている他のコンテンツとして、和声の祭典[7]と地球の旋律線[8]があります。和声の祭典は和音を書く練習、地球の旋律線はメロディを書く練習です。解答を入力すると自動採点され、和声の祭典では100点満点を目指し、地球の旋律線ではハイスコアを競うことができます。
 
 

作曲練習スピードランの紹介

 
和声の祭典の一例をお見せします。青色の音符があらかじめ与えられており、このような感じのメロディとなっています(ピアノを弾く)。ごにょごにょとしていて本当にメロディかどうかわからないようなフレーズですが、上に3パート足すことでこのような和声進行となります(ブラウザで解答を鳴らす)。
 
 

 
私はこれらの課題をランダムに選択し、一定の点数を取るまでの時間を計測しています。しかしながら、課題ごとに難易度が大きく異なり、そもそも答えをあらかじめ用意しておけば早く終えられるので、ベストタイムを競う形にするのは本末転倒です。また、これらの課題のルールとなっている和声法や対位法は規則が厳格かつ難解であり、通常のRTAイベントでは解説が追い付かないという難点もあります。例えば得点表示の下にコメントがあるのですが、これを「対斜がありますけどドッペルドミナントの1転から属七和音の基本形への進行なのでセーフですね~」などと言っても伝わりませんし、一つずつ用語を説明していっても間に合いません。というわけで今回は聴音RPGを選択させていただきました。

ただ、同じ100点でも人によって答えが違ってくるので、たくさんの方と緩く並走なんかしたら楽しそうなんですよね。というわけでどなたか一緒に遊んでいただければ大変うれしく思います。
 

 
それでは、音問村学会からの発表を終わらせていただきます。RTA BootCampはまだまだ続きますので、引き続きご覧いただければと思います。

以上です。ご清聴いただきありがとうございました。さよなら~(ピアノの鍵盤の上で手を振る)
 
 
 
 

参考資料

 
[1] RTA BootCampの公式Twitter.(2021年2月23日閲覧)
 
[2] 洗足オンラインスクール.  聴音RPG【失われた音問村】.

[4] 洗足オンラインスクール. ワオーン・デスマッチ.

[5] 洗足オンラインスクール. ネイローンの逆襲.

[6] 洗足オンラインスクール. 音楽理論・楽典.

[7] 洗足オンラインスクール. 和声の祭典.

[8] 洗足オンラインスクール. 地球の旋律線.
 
 
 

2021年2月11日木曜日

Twitchにおける音楽配信の現状、そしてTwitchで作曲配信するということ

 
 
 
 
 
初めまして、まっつと申します。普段はTwitchでオーケストラ系の作曲配信を行っています。当ブログには音楽、作曲、配信などについての記事を追加していく予定です。今後ともよろしくお願いいたします。

さて、記念すべき最初の記事として、配信コミュニティサイトであるTwitchの音楽カテゴリについて説明させていただきます。自己紹介を兼ねておりますので話が散らかってしまっていますが、要点としては以下のとおりです。
 
  • Twitchは「配信コミュニティサイト」であり、配信者同士の繋がりも大事
  • Twitchの音楽カテゴリはDJ配信が大半で、作曲配信はごく一部
  • DJ配信みたいに作曲配信者もコミュニティを作れたらいいな
 
 
 

1. Twitchについて

 
日本ではTwitchの知名度は、他の配信サイトと比較するとさほど高くはありません。2020年の3月に行われた調査において、トップのニコニコ生放送が56.1%、次点のYouTube LIVEが45.9%の人々に認知されているのに対し、Twitchは11.6%となっています[1]。知名度と同様、日本においてはTwitchの利用率も低くなっているのですが、世界全体で見るとTwitchは非常に大きなライブ配信プラットフォームです。2019年の第2四半期にはYouTube LIVEの3.5倍以上の総視聴時間となっており[2]、2020年末には月の総視聴時間として17億時間を記録しています[3]。これは日本に住む赤ちゃんからお年寄りまでが月13時間以上視聴してようやく達成できる数字です。

また、先ほどの日本での調査によると、男性10代の知名度が33.1%、男性20代の知名度が22.7%と、若年男性層の知名度は高いようです[1]。さらに、COVID-19によりオフラインイベントの自粛が進められて以降インターネットでのイベントのライブ配信が活発になり、Twitchもその存在感を強めています。後述するMusic Unity 2020では最大視聴者数が10,000人を超え、大盛況のうちに幕を閉じました[4]



Twitchの特色

 
私自身、他のプラットフォームでの配信・視聴経験が少ないのであまり語れないのですが、Twitchの特色は公式Twitterアカウント(日本)の以下の自己紹介文によく表れていると思います[5]
「グループ配信, 拡張機能, 低遅延, フルHD。一歩先を行く配信コミュニティサイトが Twitch です。」
Twitchは「配信コミュニティサイト」であり、配信者と視聴者の繋がりだけでなく、配信者同士の繋がりを深めることのできるシステムを数多く備えています。紹介文記載のグループ配信に加え(むしろこの機能が使用されているところはあまり見ないのですが)、自身の配信終了後に他の配信へ視聴者ごと移動するレイド機能、自分が配信していないときに他の配信をミラーするホスト機能などがあり、これらを利用して配信者同士でコミュニティを成長させていくことができます。特にレイドはTwitchの目玉機能と言っても過言ではなく、この機能を利用してリレー形式で配信を続けていくイベントも開催されています。


(上図)Twitchのレイド機能とホスト機能の違い




2. Twitchの音楽カテゴリの現状

 

音楽カテゴリの内訳

 
Twitchでは、配信時にカテゴリと使用言語タグを選択します。音楽カテゴリで日本語タグを付けた配信を見てみると、私の体感ではDJ配信7割楽器演奏(弾き語り、カラオケを含む)配信が2割強で、残りの1割弱作曲配信といったような内訳です。さらに作曲配信も音楽のジャンルが様々で、ヒップホップ系の所謂ビートメイキングと、これまでDTMと呼ばれてきたMIDI編集メインの作曲が半々程度となっています。なお、楽譜ベースで作曲するのは私の知る限り私一人です。

日本語に限らずDJ配信は多いのですが、海外の場合はやや楽器演奏配信が多く、特に視聴者を多く集めている配信の中では楽器演奏配信の割合が高くなっている印象があります。余談ではありますが、海外で特色のある配信といえばラジオ系で、24時間年中無休で特定のジャンルの音楽を流し続けているチャンネルがかなりあります。権利関係については謎です。


DJ配信発展の理由 (個人の印象です)

 
配信者の視点からすると、DJ配信は作曲や楽器練習の過程を飛ばして完成品の音楽から始められるところが嬉しいところです。作曲の勉強や楽器練習の過程を配信することもできますが、視聴者にとっては何をやっているかが分かりづらい時間が多く、配信者としても気後れしてしまうものです。もちろんDJの場合はそこから選曲、ミックス、エフェクター操作など、探求すべきことは多々あるのですが、完成品の音楽を弄っているので視聴者としても分かりやすく、むしろその奥深さ気軽さと相まって配信者と視聴者を増やすことに繋がっているのではないかと思います。

日本では2020年にDJ配信が活発になった印象を受けます。先ほど触れたMusic Unity 2020(MU2020)は、秋葉原のDJクラブであるMOGRAが主催となり、COVID-19の影響下でイベント開催が困難になった各地の音楽拠点を代表するDJなどによるパフォーマンスをライブ配信するイベントでした[4]。4回にわたって開催されたMU2020は各回とも大盛況を極め、このイベントで集まったDJ・クラブ愛好家たちがTwitch内で独自の配信コミュニティを形成する契機となりました。
 
 
 

3. Twitchでの作曲配信

 

私(まっつ)の配信について

 
私はTwitchにて2019年4月より作曲配信を行っております。活動内容としては楽譜作成ソフトのDoricoを使用した作曲と、その作品のDAW(Cubase)への打ち込みがメインです。先ほど作曲の勉強は配信しづらいと書きましたが、Twitchアフィリエイトになってからは特に気にせず作曲練習配信もしています。私の思っている以上に楽譜の読めない方は多いらしく、作曲や作曲練習で楽譜を表示しているときよりもDAWの画面を表示しているときのほうが視聴者数は多い気がします。

配信のスタートは決して早いほうではありませんでしたが、2020年8月Twitchアフィリエイトになることができました。Twitchアフィリエイトになることで、サブスクライブ(有料の月間購読)、ビッツ(投げ銭)といった収益化が可能になるだけでなく、チャンネルポイント(チャンネル視聴などで貯まるポイントで、配信者が用途を決められる)やチャンネルトレーラー(チャンネルを開いた際に表示される動画)の編集など、コミュニティをより活性化するための機能を使えるようになります。以下は私がアフィリエイト化した際のツイートですが、ご覧のとおり地道に配信していれば決して難しい条件ではないのが魅力です。

 
 

海外の方との交流

 
Twitchの海外での知名度の高さから、海外の方もよく配信にいらっしゃいます。私が配信タイトルに”[JA/EN]”(日本語/英語)と付けているからかもしれませんが、チャットの言語は英語のほうが多く、私も普段は日本語で喋りつつチャットには英語で対応することが多いです。英語の勉強をしたい方にはTwitchは是非お勧めしたいですし、英語が喋れなくても翻訳ツール等を使用してコミュニケーションをとられる方もいらっしゃいます。また、これも海外の特徴なのか、皆さん基本的に大げさに褒めてくださる方ばかりで、私もしばしば「素晴らしい音楽」「才能がある」「Go to Nintendo」などとお褒めにあずかっています。
 
 
 
 

おわりに

 
以上、Twitchの音楽カテゴリの現状について、自己紹介を絡めて概説させていただきました。改めて私がこの記事を書いた理由、そしてこのブログを解説した理由を述べさせていただきますと、Twitchにおける作曲配信を活性化させたいという願いがあるからです。Twitchは配信コミュニティサイトであり、様々な人が集まってコミュニティを形成し、成長させていくことができます。現時点での問題は作曲配信に人が集まっていないことで、今回一人でも多くの方にTwitchのことを知っていただき、視聴・配信していただければという思いでこの記事を執筆いたしました。

配信者として、そして視聴者として、皆さんとTwitchにて交流するのを楽しみにお待ちしております。
 
 
 

 参考資料

 




[5] Twitch Japanの公式Twitter(2021年2月11日閲覧).

聴音RPGのRTAにおけるクリアタイム予測法の検討

  1. 緒言 聴音RPG【失われた音問村】 [1] のRTAでは、ゲームの進行に必要なアイテムを購入するためにお金稼ぎを行う必要があります。聴音RPGにおいて、お金(通貨単位:ゴールド)は基本的に敵モンスターである音霊を倒すことによってのみ手に入れることができます。したがって、...